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下鴨車窓#14『旅行者』

《全日程を終了しました》
 異邦人の姉妹が故郷を目指す旅の物語

[脚本・演出]田辺剛
[日程]〈伊丹〉8月6日(土)-7日(日)AI HALL〈東京〉8月20日(土)-21日(日)座・高円寺1
[上演時間約1時間45分 約2時間(7/29修正しました)

[出演]今井美佐穂(第0楽章)
    大沢めぐみ f
    笠井幽夏子(俳優座) f
    たかはしまな f
    邁 f
    松原佑次(遊劇舞台二月病) f
    三遊亭はらしょう f
    大熊ねこ(遊劇体) f
    F.ジャパン(劇団衛星) f

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[舞台監督]山中秀一[舞台美術]川上明子[照明]葛西健一(GEKKEN staff room)
[演出助手]ニノキノコスター(オレンヂスタ)

主催:下鴨車窓
提携:伊丹市立演劇ホール(伊丹公演)、NPO法人劇場創造ネットワーク/座・高円寺(東京公演)
後援杉並区(東京公演)
助成:芸術文化振興基金

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とにかく彼女たちは疲れていた
 知らない時代の遠い世界の話。大きな戦争があってその混乱がやっとおさまりそうな頃のこと。
 どこまでも広がる荒野の中を走る一本の線路。それを伝って歩く三人の女性がいる。彼女らは街を追放されて故郷を目指す、異邦人の姉妹だ。海を渡るためには亡き父が生前言ったように叔父(会ったことはない)の援助を受けなければならない。その叔父は荒野のただ中にある寂れた村に住むという。
 とにかく彼女たちは疲れていた。戦争の混乱を生き抜いてやっと落ち着いたと思ったら父を亡くし旅に出なければならなくなる。遠くにやっと村が見えてきた。三人は黙々とひたすらに歩いている。

下鴨車窓の代表作

『旅行者』(2008年) 下鴨車窓は、2006年3月に京都にて初演し、2007年に第14回OMS戯曲賞佳作を受賞した『旅行者』の再演ツアーを2都市にて行います。
 この作品は、現代日本からは場所も時代も遠く離れた世界の、街を追われた異邦人の姉妹が故郷を目指して旅する物語です。2006年の初演と翌年の戯曲賞受賞を経て、この作品は再演を重ねて来ました。2008年には大阪・精華小劇場(現在は閉館)で、さらに2010年には戯曲が韓国語に翻訳され、日本はNPO法人劇研と韓国は劇団ノットルとの共同制作によって、日本の京都、韓国のウォンジュとソウルで上演されました(演出=ウォン・ヨンオ/劇団ノットル)。これらの公演すべてにおいて、演劇専門誌や新聞などに劇評として取り上げられ好評を得ています。

抽象的でありながら、強烈に現実的。どこでもないようで、確実にどこかであると思わせる現実性。中国・朝鮮の残留孤児、パレスチナ難民、そして多くの亡命者たち。観客は何もないだだっ広い舞台の上に彼らを見出すだろう。国家や社会に追われ、家族は離散する。人類が経験し続ける大きな過ちに、われわれはあらためて正面から向き合わされるのである。

正木喜勝氏(演劇評論誌 act no.15/2008年4月号より抜粋)

がらんとした何もない舞台にほの暗い照明が陰影を繊細に焙り出す。人物たちがぽつんとたたずむだけで、孤独と不安、拠り所のなさが漂うような、簡素で的確な空間造形だ。<中略> 戦争は個人のアイデンティティすら崩壊させかねず、その前で人間の存在は曖昧で頼りない。戦争の不条理が、象徴的に描かれた。

九鬼葉子氏(日本経済新聞関西版 2018年4月3日夕刊より抜粋)

人の存在は、実は曖昧なものでしかないことが、きちんと生存の危機に近い環境で問われている。<中略> 見捨てられた者同士が寄り添う、という優しい結末を強く逞しいと感じた。戦乱で引き裂かれる家族。その中でささやかに幸せを作りたいという気持ち。そこには、偽悪を必要としない誠実さや、何かを構築したいと願う気持ち、建設への意志を感じる。

鈴江俊郎氏(第14回OMS戯曲賞選評より抜粋)

反戦の思いがあって書いている。<中略> 女性たちは虐げられ、男性たちは戦争で死んでいく。それが舞台で見えたのでは? 書こうとする意図は強く表れている。

渡辺えり氏(第14回OMS戯曲賞選評より抜粋)

10年目の再演

『旅行者』(2006年) 遠い故郷を目指す人々の物語には「故郷」「国籍」「迫害」「法」などをキーワードとするテーマが折り込まれています。日本と世界を取り巻く状況は変わり続けていますが、そうした時代の変化のなかでも『旅行者』が取り扱う問題はいまだにわたしたちの社会に突きつけられたままだと考えます。初演から10年を経て、この戯曲の上演を通じて現在の社会のありようを問題提起したいと考えています。出演者は地元京都だけではなく、大阪や東京の俳優も参加。地域を越えた座組で新たな劇世界の構築を目指します。どうぞご期待ください。

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